セール記事を書くとき、私はいつも割引率ではなく遊んだ時間で割ってきた。三十本を八割引きで買っても、起動したのが二本なら、あの買い物は八割引きではなかったからだ。今回は同じ計算を、出ていくお金ではなく入ってくるお金にやってみる。ロブロックス、フォートナイト、ディアブロ。「遊びながら稼げる」という話を、公表されている数字だけで割り算すると、夢と実務の境目がわりとはっきり見えてくる。

「ゲームで稼げるらしい」という話は、だいたい分子だけで届く。月に何百万円稼ぐロブロックスの開発者がいる。フォートナイトの島で食べている人がいる。ディアブロのレアアイテムが数万円で売れる。——全部、たぶん本当だ。嘘は入っていない。
ただ、私はセールの記事を書くとき、いつも同じことをしている。割引率ではなく、遊んだ時間で割る。三十本を八割引きで買っても、起動したのが二本なら、あの日の買い物は八割引きではなかった。同じ計算を、今回は出ていくお金ではなく入ってくるお金にやってみたい。
結論から言うと、道はちゃんとある。ただし、公表されている数字を素直に割り算すると、「遊びながら稼ぐ」と「稼ぐために遊ぶ」の境目がかなりはっきり見えてくる。その線を、この記事で引く。
ひとまとめに語られがちだが、中身はまるで別物だ。難易度も、上限も、リスクの種類も違う。
ロブロックスやフォートナイトが用意している、プラットフォーム公認の分配の仕組み。ゲームを遊ぶのではなく、遊ばれるものを作る側に立つ道だ。運営が金を払うと明言しているので、いちばん筋が通っている。そして、いちばん労力がいる。
プレイそのものをコンテンツにする道。配信の収益、大会賞金、スポンサー。ゲームは上手いほうがいいが、上手さだけでは足りない——というのが、この道のいちばん厄介なところだ。
ゲーム内の通貨・アイテム・アカウントを、ゲームの外で現金に換える取引。いわゆるRMT(リアルマネートレード)だ。「稼げるゲーム」という話題でいちばん先に名前が挙がるのはたいていこれで、そしていちばん先に説明が省かれるのもこれである。省かれている部分は、あとで丁寧に書く。
ロブロックスの話から始めるのは、この会社が自社サイトで儲けの分布まで公開しているからだ。都合の悪い数字を隠していない、という一点で信用に値する。
まず規模。同社のクリエイター向けドキュメントによれば、1日あたりのアクティブユーザーは1億3,200万人で、平均して1日2.6時間を過ごしている。対象は180か国を超える。分母としては申し分ない。
仕組みはこうだ。ゲーム内で売ったものについて、クリエイターの取り分はRobuxベースで70%。それを現金にするには DevEx(Developer Exchange)という換金プログラムを通す。参加できるのは13歳以上で、Earned Robux を30,000以上稼いだ人。レートは10,000 Robux = 38ドルに固定されている。
ここからが本題だ。同じページに、こう書いてある。
2025年、上位1,000人のクリエイターの平均収入は130万ドル、前年比50%成長。——これが、記事の見出しになる数字である。夢がある。
その少し先に、こう続く。DevEx プログラムの参加者は35,000人超で、2025年12月31日までの12か月間に受け取った額の中央値は1,550ドル。
1,550ドル。1ドル150円なら、年間およそ23万円だ。月に直すと2万円弱。この額を稼ぐために、ゲームを設計し、作り、公開し、更新し、1年間続けている。しかもこれは「DevEx に参加できた35,000人」の中央値であって、30,000 Robux の壁を越えられなかった人はこの分母に入っていない。
130万ドルと1,550ドル。同じページに並んでいるこの二つの数字が、「ゲームで稼ぐ」という話の全体像をほぼ説明している。上澄みは本当にすごい。中央は、副業として立派だが、夢ではない。
フォートナイトにも、島を作ったクリエイターへの分配がある。エピックの開発者向けドキュメントには、アイテムショップなどの対象純収益の40%が Engagement Pool(エンゲージメント・プール)に入ると明記されている。40%という数字は、プラットフォーム側の取り分としてはかなり思い切ったほうだ。
ただし、名前のとおりプールである。40%は「あなたに払われる率」ではなく、世界中の対象クリエイターで分け合う原資の総額だ。自分の取り分は、自分が集めた遊び時間と、他の誰かが集めた遊び時間との相対で決まる。頑張りが増えても、周りがもっと頑張れば取り分は減る。ここは、固定レートのロブロックスとは性格がまったく違う。
参加要件も、遊ぶだけの人には少し重い。同ドキュメントによれば、本人(または法人の代表者)が18歳以上であること、Epicアカウントがフォートナイトで30日間アクティブで、うち7日以上は島の編集に使われていること、Fortnite Developer Terms への同意、そして Hyperwallet で支払いを受け取れること。「遊んでいたら振り込まれる」仕組みではないことが、要件の並びから読み取れる。
さて、RMTだ。ハック&スラッシュ系は、レアアイテムに値段がつきやすい構造をしている。だから「ディアブロで稼ぐ」という話は昔からある。
ここは推測で書きたくないので、規約そのものを見る。ブリザードのEULA(使用許諾契約)には、Prohibited Commercial Uses(禁止される商業利用)という項目があり、そこに次の行為が明示的に並んでいる。
同EULAは、利用者に許されるのは個人的かつ非商業的な娯楽目的に限ると定め、権利と義務を他人に移すことはできないとも書いている。後者は、平たく言えばアカウントの売買・譲渡が想定されていないということだ。
ロブロックスも同じ立場を取っている。利用規約には、第三者サービスを通じて Robux や仮想コンテンツを売買・譲渡することは規約違反であり、その取引は無効となり、アカウントの即時停止または終了に至りうるという趣旨が明記されている。Robux 自体についても「現実の通貨と同等の価値を持たない」「DevEx を除いて現金に換えられない」と書かれている。
RMT を「グレー」と呼ぶ人は多いが、運営各社の規約の中では、グレーではなく明確に黒側に置かれている。そのうえで、実務的に何が起きるかを並べると次のようになる。
| 起きること | 中身 |
|---|---|
| アカウント停止 | 買った側も売った側も対象になりうる。長年育てた資産と課金履歴が、一度に消える |
| 取引の無効化 | 規約上そもそも無効な取引なので、消えた分を運営に請求する筋道がない |
| 詐欺 | 先に渡した側が持ち逃げされる、決済後に取り消される、といった典型が成立しやすい。運営が保証しない領域なので、揉めても戻る先がない |
| アカウント乗っ取り | 売買の過程で認証情報をやりとりする形式は、それ自体が乗っ取りの入口になる |
| 周囲への影響 | 需要があるほど自動化(BOT)による収集が増え、ゲーム内経済とマッチングが荒れる。自分の遊び場が痩せていく |
私はここで「絶対にやるな」と説教したいわけではない。ただ、期待値の計算に、停止されたときの損失と、詐欺に当たる確率を入れていない見積もりは、見積もりではないと言いたい。八割引きで三十本買う話と同じで、分母を書かない計算は、いつも実際より魅力的に見える。
ここまでを、マネタイズ難易度・狙える額・規模・日本での距離感で整理する。先に断っておくと、ユーザー数と人気度は各社の公表基準がばらばらで、横並びの数値比較ができない。だから順位は付けず、傾向として書く。数値を出しているのは、出典で確認できたものだけだ。
| 道 | マネタイズ難易度 | 狙える額の現実 | 規模と日本での距離感 |
|---|---|---|---|
| ロブロックス (作る) |
高 ゲーム制作+運営 |
公表値で中央値 年1,550ドル、上位1,000人平均 130万ドル。格差が極端 | 1日1.32億人・180か国超。ただし日本語圏の話題量は英語圏に比べて薄く、日本だけを狙う設計にはしづらい |
| フォートナイト (島を作る) |
高 UEFNの習熟が要る |
対象純収益の40%が原資。取り分は他人との相対で毎月変わる | 世界的な知名度は最上位クラス。日本でも一般名詞化しているが、島クリエイターの人口は薄い |
| 配信・eスポーツ | 非常に高 競技力+人気 |
上澄みは大きいが、分布は最も歪む。専業比率が低い | 視聴文化は日本にも定着。ただし競技シーンの規模はタイトル依存が大きい |
| RMT (ディアブロ系ほか) |
低く見えるだけ 参入は容易 |
時給換算すると低いことが多い。停止・詐欺の損失を引くとさらに下がる | 需要は世界中にあり、日本語の仲介サイトも存在する。ただし各社規約では明確に禁止側 |
それぞれの、いちばん多い転び方も書いておく。
この表を眺めて、私がいちばん引っかかるのは最後の行だ。RMT だけが「難易度が低く見える」。実際に低いのは参入の難易度だけで、割に合うところまで持っていく難易度は、たぶん他と変わらない。そして失敗したときの後始末だけが、他より重い。
ここを飛ばす記事が多いので、短く触れておく。
国税庁のタックスアンサーによれば、給与所得者であっても、給与所得・退職所得を除く各種の所得金額の合計が20万円を超える人は確定申告をしなければならない(給与を1か所から受け、その全部が源泉徴収の対象である場合。令和7年4月1日現在の法令等による)。
ロブロックスの中央値、年1,550ドル。1ドル150円で計算すると約23万円で、この線をまたぐ。「趣味で作ったゲームに、少しお金が入った」くらいの実感でも、手続きの側では境界の向こうに出ていることがある。
加えて、DevEx も Hyperwallet もドル建てだ。受け取り時点の為替、送金手数料、経費として何を計上できるか——このあたりは一般論で片付く話ではない。金額が動き始めたら、記事ではなく税務署か税理士に聞くのが結局いちばん安い。ここは私の守備範囲の外だと、正直に書いておく。
否定するために書いたのではない。ロブロックスの上位1,000人は実在するし、フォートナイトの40%も本物だ。ただ、始める前に三つだけ確かめてほしい。
最後に、ひとつだけ実感を書く。セールの記事を書き続けて分かったのは、「安く買えた」より「よく遊んだ」のほうが、あとから満足度が高いということだった。稼ぐ側もたぶん同じで、長く続いている人は、稼ぐために始めていない。作るのが面白いから作って、面白かったから続いて、結果として振り込まれている。
順序が逆だと、たいてい途中でやめる。そして、やめた人の時間は、どの統計の分母にも入らない。——夢の話に分母がないのは、そういう理由でもある。
この記事の数値と引用は、以下のページを直接開いて確認しました(確認日:2026年8月2日)。