正直に言うと、自分のライブラリを開くたびに気まずくなる。買った瞬間はどれも「絶対遊ぶ」と思っていたはずなのに、未開封のまま積まれているタイトルの方が多い。この記事では、その現象を「意志が弱いから」で片づけず、セールの仕組みと自分の頭の中で何が起きているかを、番長なりに整理してみる。

正直に言うと、番長のライブラリにも消化しきれていないタイトルがそれなりにある。セールの通知が来るたびに気になっていた1本を確認し、気づけばカートに追加している。悪いことだとは思っていない。ただ、なぜこんなに積むのかを考えたとき、「自分がだらしないから」で終わらせるのは違う気がしている。セールの画面設計そのものが、人間の判断のクセを利用してできているからだ。ここでは購入までの心理をいくつかのレバーに分解しながら、積みゲーがどう生まれるかを、実感ベースで整理してみたい。
セールページで最初に目に入るのは、たいてい取り消し線の入った定価だ。この定価が基準点になり、割引後の価格が実際より「お得」に見えてしまう。これはアンカリングと呼ばれる、行動経済学ではよく知られた効果だ。定価がそもそも妥当な価格だったかどうかは、多くの場合検証しないまま「安くなった」という感覚だけが先に立つ。値引き率が大きく見えるほど、この効果は強く働きやすい。
人は同じ額でも、得をする喜びより損をする痛みの方を強く感じるとされる。これは損失回避と呼ばれる性質で、セールの期限表示や「あと〇時間」といった演出と組み合わさると、「今このタイミングを逃したら二度と手に入らないかもしれない」という焦りに変わりやすい。実際には多くのタイトルが数か月後にまた値下がりすることも珍しくないのだが、その情報は焦りの前ではあまり力を持たない。
気になっていたタイトルをウィッシュリストに入れ、セールで値下がりした通知を見た瞬間、まだ購入していないのに「もう自分のもの」という感覚がうっすら生まれることがある。ここで名前を出したくなるのが保有効果だが、正確に言うとこれは少し違う。保有効果は本来、すでに自分が持っている物を、持っていない場合より手放しにくくなる現象を指す。無料トライアルのように一度使わせたり、その商品が自分の部屋に置かれた様子を見せたりして所有の感覚を先取りさせる手法は知られているが、リストに入れて通知を眺めているだけの状態は、そこまでの接触を伴わない。それでも「買わない」という選択に抵抗が生まれるのだとしたら、働いているのはむしろ、値下がりを逃す痛みのほう——つまり一つ前で見た損失回避に近いのだろう。ウィッシュリストに長く置いてあったタイトルほど、この感覚は強くなりやすい。
すでに積んでいるタイトルが増えるほど、「これ以上増やすのはよくない」とわかっていても、なぜか手が止まらないことがある。サンクコストは本来「これまで使った分は取り返せないので、これからの判断には関係ない」という考え方だが、実際の心理はそう単純には働かない。この、すでに払った分に引きずられて先の判断を歪めてしまう傾向はサンクコストの誤謬と呼ばれる。積んだ罪悪感を「今度こそ絶対遊ぶから」という決意で埋め合わせようとした結果、さらに積みが増えるという逆説が起きやすい。番長自身、何度も覚えのある流れだ。
脳の報酬のはたらきについては、「欲しい」と駆り立てられることと、実際に味わって「気持ちいい」と感じることを別の仕組みとして分ける見方が知られている。買う瞬間の高ぶりを前者に、遊ぶ楽しさを後者に当てはめるのは、あくまで番長の当てずっぽうだ。ただ、そう考えると腑に落ちるところはある。買う行為そのものが小さな達成のように感じられ、そこで気持ちが一区切りついてしまう。結果として「買って満足」が完結し、プレイという次のステップに進む前にエネルギーを使い切ってしまうことがある。番長の場合、購入直後にストアページのスクリーンショットを見返すだけで、なんとなく満足してしまうことすらある。遊んでもいないのに、だ。
積みゲーが数本のうちは、次に何を遊ぶか迷わない。ところが数十本を超えたあたりから、選ぶこと自体が負担になっていく。選択肢過多と呼ばれる状態では、「せっかくならベストな1本を選びたい」という気持ちが逆に決断を遅らせる。もっとも、これはいつでも起きるわけではないとされていて、遊びたいジャンルがはっきり決まっている人には、本数が増えてもあまり効かないらしい。効いてくるのは、何をやりたいのか自分でも決めきれていないときだ。ライブラリを開いて何十分もタイトル一覧を眺めた末、結局いつもの1本を起動する、というのはよくある話だ。積みが増えるほど遊ぶ本数が減るという、なんとも皮肉な流れができあがる。
複数タイトルをまとめて安く買えるバンドルは、1本あたりの単価で見るとお得に感じやすい。ここでも基準点になるのは単体価格からの割引率で、「バラで買うより明らかに得」という比較がまとめ買いの後押しになる。中身の何本かにしか興味がなくても、「他のタイトルもいつか遊ぶかもしれない」という期待が、バンドル全体の購入を正当化しやすい。
心理の仕組みを知ったところで、セールそのものが悪いわけではない。ただ、いくつかの工夫で積みの増え方は変えられると番長は思っている。
それでも積みは多少残るし、それ自体は悪いことではないと番長は思っている。積みゲーがあるということは、それだけ「気になったタイトル」に出会えたということでもある。ただ、「なぜ積んだのか」を少し自覚できるだけで、次の購入ボタンを押す前の一呼吸が変わってくる。どのタイトルから遊び始めるか迷っている人は、どのジャンルから始めるか(積みゲーにしない最初の1本の決め方)もあわせて参考にしてほしい。
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